最もシンプルに整理すると、
天皇には3つのお立場がある。(1)皇祖(天照大神)の“系統と精神”の正しい継承者(2)国家の公的秩序の頂点(3)国民結合の中心これらのうち、(2)は憲法に規定する「日本国の象徴」に該当する。(3)は同じく「日本国民統合の象徴」に当たる。(1)はそれらの根底(又は前提)をなす、“前”憲法的なお立場と言えよう。これら3つのお立場に対応して、天皇のご活動も3種類に分類できる。憲法に規定する国事行為は、(2)国家の公的秩序の頂点=日本国の象徴としてのご活動。「象徴としての公的行為」(公的行為、象徴行為)とされるご活動の内容は、多様多彩だ。よって、一括した説明は出来ないものの、(2)国民結合の中心=日本国民統合の象徴としてのご活動が大きな比重を占める(但し、公的行為とされる外国元首のご接遇や外国へのご訪問などは、むしろ国家の公的秩序の頂点としてのご活動であり、これらの他にも例外すべきものは少なくない)。現在、政府が天皇の「その他の行為」と位置づけているものの重要な部分は、他ならぬ皇室の祭祀(宮中祭祀・山陵〔さんりょう〕祭祀・勅祭)であり、この祭祀は(1)皇祖の系統の正しい継承者としてなさる大切なお務めだ。だから、(1)皇祖の継承者=「神道の最高の祭り主」と見なすこともできる。こうした3つの分類に対応して、皇位継承儀礼も主なものは3種類行われる。「神器(じんぎ)」の継承を表示する「剣璽等(けんじとう)承継の儀」(国事行為)と「賢所(かしこどころ)の儀」(皇室行事)は、(1)のお立場を確認する儀式。「高御座(たかみくら)」に昇られてご即位の事実を宣明される「即位礼正殿(せいでん)の儀」(国事行為)は、まさに(2)のお立場を確認する儀式。「民(たみ)の稲」(国民が育てた稲)を天皇が皇祖にお供えになって、ご一緒に召し上がられる「大嘗祭(だいじょうさい)」(皇室行事)は、(3)のお立場を確認する儀式だ。かなり粗っぽい整理ながら、このように分類すると、
天皇のお立場とお務めが“統一的”に理解できるはずだ。